ツンデレ地味子の両手に華?!
何て言う殺し文句。女の子なら、それを言われれば嬉しいに違いない。

でも、私は違う。そんな言葉鵜呑みにしない。

「…痒いところはありませんか?」
「…いえ、特に」

「…さっきとは全然態度が違うね?どっちが本当の美野里ちゃんかな?」

「…」

無言の私に対し、クスクス笑う明。

「…さっきの言葉信じてよ。彰人さんは、専属客なんて、とらない人なんだよ。滅多に素人さんの髪は切らない。芸能人ばかりが相手だから」

「…え?」

シャンプーが終わり、先程のイスに座らされた。

「さっきは眼鏡かけてたから。美野里ちゃんの顔が分からなかったけど、眼鏡外して、納得した。美野里ちゃんは、とっても綺麗だよ。美野里ちゃん、彰人さんの、大事な人?」


「…なっ、そ、そんな事、あるわけ」

ない。私は不細工な女だ。綺麗であるはずがない。彰人の大事な人であるはずかない。

「…純粋無垢。その言葉が、美野里ちゃんにピッタリだ。
彰人さん、シャンプー終わりました」

「…あぁ、今行く」

…明が変なことを言うから、彰人を意識してしまう。

「…どうした?」
「…別に」

私は目線をそらした。

「…今後、もう二度と眼鏡はかけるな」
「…なっ、そんな勝手な」


「…目が悪いわけでもないんだろ?」
「…そう、だけど」

「…綺麗になりたいなら、言うこと聞け」
「…でも」

こまった顔で彰人を見ると、…またあのときと同じ、優しい笑みを浮かべた。

…そんな顔を女に見せるなど初めて見た明が驚いていたことなど、知るよしもなかった。
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