石川くんにお願い!



火照る身体と溢れそうな涙

熱が上がったのかな??
石川くんの初修行だったのに最悪だ。頭が痛い……身体がだるい…心が……


「…っ」

倒れてしまいそうなそんな時だった

「言わんこっちゃない」

優しい言葉に包まれふわりと支えられた身体。そして冷たいペットボトルが私の熱い頬を冷やした


「…石川くっ」

「…スポーツドリンクだよ。様子見に来たら赤い顔して。」

顔をあげたら呆れた顔をした石川くんが目に映る


「来てくれたの?師匠…」

きごちなくそう言うと彼は大きくため息をついた

「師匠と呼ぶなら言うことを聞くこと。送って行くから今日は帰るよ。朱里」


そんな言葉を投げかけると頬を冷やしていたスポーツドリンクの蓋を開けてくれる


「飲む?」

「は、はい。ありがとうございます…」


自覚するのが遅いかもだけど、完全に風邪

師匠が買ってくれた貴重なドリンクが渇いた喉を潤してくれた


冷たくて…気持ちいい


「……女の子達との約束は大丈夫?」

「何言ってるの。そんなのはどうでもいいよ。今はね」


私の手からドリンクを受け取り蓋を閉めた彼は、冷たい手で私のおでこに触れる


「んっ…」

「全く。興奮と風邪を間違える子は君くらいだよ。朱里」

「ご、ごめんなさい……」

「……すごい熱だね」


歩ける?と質問を投げかけられたので、私はゆっくりと頷いた。石川くんがそんな私の手をしっかり掴んで歩き出す


なんだかホッとする……


「迷惑かけてばかりでごめんなさい……」

「自分がこんなに面倒見がいいだなんて、意外な一面に驚いてるよ」


クスッと優しく笑って彼がそんなことを言った


ああ…熱で視界が歪んでても石川くんは眩しい。ああでもそんな眩しい彼に合わす顔がない……修行ちゃんとできなかったし。あんなに協力してくれたのに


「心配しないで大丈夫」

「え?」

「さっき窓にもたれてかかって姿……みんな見てたよ。修行は成功」


何かを見透かしたんだろうか

良かったねなんて温かみのある声色に、さっきまでの悔しさと怒りが何故だか消え去った


私を安心させるために気を使っていってくれたんだと思う。それでもその言葉はすごく嬉しい。2人を見返すのに一歩近づけたから

「ほら。危ないよ。大丈夫?」

足が所々でもつれると石川くんは何度も転ばないように支えてくれる



「石川くん……ほんとにごめんね」

「いいよ。気にしてないから」

「でも……師匠のあれの邪魔しちゃうなんて弟子失格でしょ?死なないでね…」

「朱里は俺をなんだと思ってるの?」

「エロスの森の神様…」

「うん。人間じゃなかったね」


そんな会話をして敷地内の外に出ると、そこにあるベンチに石川くんが座らせてくれた


「ちょっと待っててね」


そしてそのまま背中を向けて行ってしまう


……なんだか寂しい。一体どこにいっちゃったんだろう


ぼーっとしながら待っていると、何故だかさっきの華奈のことを思い出した


男のせいで友情ってこんなに簡単に壊れるんだ。大好きな筈だったのにこんなにイラついちゃうんだ……


どの感情なのか自分でもわからないままただ一点を見つめて、喉が渇けば先程もらったスポーツドリンクを飲んだ


そんな私の元へ10分もしないうちに石川くんが戻ってくる


「おまたせ。立てる?」

「うん。大丈夫」

優しく立ち上がらせてくれたと思えば、彼は出入り口である門とは逆の方向に歩き出した


「?どこいくの?」

「あっち。」


あっち?あっちは駐車場しかないよ……そう言いたいけどもう頭がガンガンして言葉を発することすら辛い


なので師匠に身を任せたら、案の定駐車場に着く。そして似合わない色の軽の車の前で彼の足が止まった



「送っていくから乗って」

「え、え、車で来てるの?」

「まさか……借りたんだよ。今日はご機嫌をとったから」



ご機嫌を…とった?


よくわからないまま車に乗せられると、覚えのある香り

誰に借りたの?

そんな心の声を表情から受け取ったのか


「……保健室にいた先生だよ」


と教えてくれた




うん……もうすごすぎるよ
石川くん












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