石川くんにお願い!

「いや…でも…」

「もう私には貴方しかいないの!!話したこともない見ず知らずの女がこんなこと頼むなんておかしいと思う!だけど、石川くん女の子の扱いスペシャリストなんでしょ!?」

「…スペシャリスト…?」

「とにかく…なんでもしますから!お願いします!弟子にしてください!!」

私の懇願に彼は少し考え込む

「…三回回ってワンって言ってみて」

クルクルクル

「わんっ!!」

「…ぷっ」


いきなりの注文を文句なくやった私に思わず吹き出した彼。

これは…脈あり!!


「な、何回でもやります!!わんっ!ワンっ!ワンっ!」

「ちょっ…ちょっとまってもういいから」


クルクルクルクル何回も回ったので、足がグラつくと石川くんが受け止めてくれた


「素直で純情…正反対だね。」

「え、だ、だれと?」

「いや。こっちの話。いいよ…最近誰を相手にしても面白くなかったから刺激的かもしれないね。」


質問には答えてもらえなかったけれど、良い返事に思わず目を輝かせるとクイッと顎を持ち上げられた。


「名前は?」

「あ、ま、間宮朱里です。」

「…朱里ね。沢山相手にしてきたけど、助けて下さいって言われたのは初めてかな。」


妖艶に笑った彼に思わず釘付けになって思考が停止する。

何この人…イケメン界の神様?

突っ立っている私の耳元に、そっと石川くんの唇が近付いた。


「俺がいないと生きていけなくなるかもしれないけれど…大丈夫?」


え…

いたずらっぽく笑う彼に私はその言葉の意味を深く考える


石川くんがいないと…生きていけない?


「もしかして怖くなった?強要はしないよ…」


なにそれ…

そんなの…そんなの…


すんごい素敵じゃないかっ!

「よろしくお願いします!!」


私はグッと彼の大きな手を握りしめた。


「え…」

「つまり石川中毒というわけですね!この手によって私は新たな世界を見出すのですね!!」

「…い、いや落ち着いて…」

「これが落ち着けますか!!いやもう…私のことは雌豚とでもお呼びください!」

「いや…呼ばな…」

「よろしくお願いします!師匠!!パシリでもなんでもやりますっっ!!」


ブンブンと握手している手を振れば困ったように目を見開いてる師匠が映った。


「朱里…君変って言われない?」

「はっ…こ、これは言葉責め!?」

「いや…全然違うかな」

「い、石川くんってば気が早いっ!さすが師匠!」

「…い、いや…」

「石川中毒者になるのが楽しみだぁあああああ…」

「…うん。やっぱり変だ」


恋人でも友達でもない私たちの不思議な関係が

ここから始まる。


待ってろ大ちゃん
私はこの天才の手によってNEW朱里に変貌を遂げ、絶対後悔させてやるんだから!



「…がんばれ私ー!!」

意気込む私の横で

「…大変なことを引き受けちゃったかな…」

石川くんは静かにため息をついたのだった。









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