spicy◇candy
藤谷の説明が終わる頃、一時限目は終わっていた。クラスメート達と先輩含め、部活の仲間は貴重な授業が潰れた不満をずっと顔に表したまま、各々の教室に帰っていった。

さて、校舎裏には俺と藤谷二人になった。先生も腫れすぎた頬を撫でながら無様に去っていた。藤谷の声が超至近距離で冷淡な響きとなり、俺の興奮を収めた。

「かっこつけなくてもいいでしょ」
「つけないとダセーって言うんだろ」
「言わないし。ってかそろそろ名前で呼べし」

俺の次の台詞は、藤谷じゃなかった、和美の唇により強制的に抑制された。初めてのほろ甘な口付け。あの性格からは想像もつかない薄ピンクの女らしい小さな唇。

一つの大人の階段を上る。甘くて切なくて苦いのが大人なんだなと改めて痛感した。
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