ガラクタ♂♀狂想曲
落としモノ






「————でさ?」





これでもう何回目だろう。
この子の恋バナ聞くの。

缶ビールを片手に、まだ火がついていない煙草を咥えている姿が、どこか大人ぶっているようにも見える子。


「昨日も一緒にご飯食べたんだけどさ、俺ずっと彼氏の話ばっか聞かされてたし」


そう言って丸いガラステーブルの前へすとんと腰を下ろし、いつものように手慣れた感じでカチリと煙草に火をつける、この子。


「いいなあ…何食べてきたの?」

「ええっとイタリアン? トマトいっぱい食べたって感じ」

「ふーん」

「あ、今度一緒に行く? 結構普通にウマかったけど——、ってその話じゃなくてさあ」


今日も"普通"に私の部屋へ上がりこんでいた。名前は——。


「てか彼氏の話なんて、俺あんまり聞きたくないのにさあ」


そう言って、だけど少し楽しそうに笑う。


「俺はあいつの悩み相談室かっての」

「なら、もう会うのやめたら?」


すると大袈裟に肩を落とし、私に向かって"ぶはあっ"と勢いよく煙を吐き出した。

< 1 / 333 >

この作品をシェア

pagetop