ガラクタ♂♀狂想曲

楽しみかも。
そういえば人を交えてお酒を飲むのは、デンちゃんの友達に会って以来のことだ。あのときのデンちゃんは、周りに結構そっけなかった。

私の友だちなんかは、デンちゃんのことを年下のクセして、いやに落ち着いた雰囲気と言っていたほどだ。

だからきっとつまみにはノーマルな味のエビせんが欠かせないとか、ピンクか生成りに1時間も真剣に悩んでいただなんて、言ったところで信じてもらえないと思う。

あれが私にとって、人を交えたはじめての宴会。あのデンちゃんは、かなり新鮮だった。


「——それでは、お先に失礼します」

「ああ、津川さん。お疲れさまでした」


まだスタッフと談笑中だったオーナーは、こちらへ顔を向けてそう言い、腕時計を確認した。


「それでは、そろそろ皆さんも」


その声に何人か残っていたスタッフたちも腰を上げ、それぞれが欠伸を交えた伸びをする。


「津川さん」

「はい?」


ちょいちょいと手招きされた。


「エビせんは、買わなくていいです」

「は?」

「そうあいつにも言っといてください」

「——はあ」

「じつは俺もあれ好きなんで、夕方大人買いしたところです」

「わかりました」


なんだ、そうか。犯人はオーナーだったのね。


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