ガラクタ♂♀狂想曲

「見せて」


素直に差し出してきた体温計を見れば、39.7というデジタル表示。お風呂上がりだとはいえ、こんなに高熱なのにキスしたとき気付いてあげられなかった。


「何度?」


ちょこんと首を傾げたデンちゃん。


「——薬、飲もうか。確か薬箱に風邪薬があったはずだし」


私の頬を撫でるデンちゃんへ手を重ね、ゆっくりそれを引き離して腰を上げた。

裏ラベルを確認して2錠だけを取り出しグラスに水を入れる。


「俺、何度だった?」


身を起こそうとしてくるデンちゃんを支え、口元に錠剤を当てた。大人しくそれを口に含んだデンちゃんはグラスの水を飲み干す。


「もっと飲む?」

「そんなに高い?」

「これ飲んで、あったかくして腐るほど寝て、たくさん汗かいて、起きたら栄養あるものモリモリ食べよう。熱が下がったときに何度か教えてあげる。だからゆっくり寝て」

「——ショコちゃん」

「私、ここにいるから」


私の感情をたとえる言葉を、いまようやく見つけたような気がする。


「おやすみデンちゃん」


愛おしい。
多分どうしようもなく。

そしてデンちゃんが目を閉じたあと、ゆっくり息を吐き出した。





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