ガラクタ♂♀狂想曲

「だからショコちゃん? 今日は泊まってくよ俺」

「えー…」


どんな理由なのよ、それ。
どっと疲れた私はまだ長い煙草を灰皿へ押し付け、消えたのを確認してから床へごろんと横になった。


「いいでしょショコちゃん」

「なんなの、ほんと」

「じゃあショコちゃんは、俺がボッコボコにされちゃってもいいわけ?」

「しらないよ、もー」

「鼻血出してもいいってわけ?」

「しらないってば」

「ショコちゃんてば酷い」

「もー…」


こんなこと言うデンちゃんだけど、確か喧嘩は強かったはず。だって私が浮気現場を目撃したあと、飲んだ暮れデンちゃんを呼びつけた、あの日。

事情を話したかどうだったか、私はあまり覚えていないけれど。デンちゃんとここへ戻ったら、まだあの男がいて——。


「俺まだ飲み足りないし、明日せっかく学校が昼からだしさあー。ねえショコちゃーん」

「……ご自由にぃ」


知らない、もう。
勝手にどうぞ。

そしてだらしなく寝転んだまま、床に転がっていた携帯を手繰り寄せ、メールやLINEに目を通す。


「ショコちゃーん」


するとデンちゃんの声が少し遠い。
クッションを抱え込み、うつ伏せ状態の私は返事をせず顔だけ上げた。

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