ガラクタ♂♀狂想曲

会いに行きたいか、行きたくないかではなくて。そりゃ会いたいに決まっている。

それをいつにすべきか。
それが問題なのだ。

すると携帯が鳴った。

確認すれば向こうで知り合った西崎さんからだ。西崎さんは日本で歌手指導とかやっているひとで、ピアノも上手い。

そんなひとがたまたま僕のコンクールを見てくれ、終わったあと声かけてくれたことがキッカケで親しくなった。年に数回はオーストリアに来ていたから、そのときは西崎さんの知り合いも交えて飲んだりも。


「おひさしぶりです」

『おー帰国したんだってな』

「そうなんですよ」

『またコンクール荒らしでもするのか?出るときはいってくれよ』

「しませんよ、そんなの」

『しないのかー。じゃあ仕事紹介させてくれ』

「あー僕もう決まっちゃいました」


アルバイトが決まったことを報告すると、耳元で西崎さんの唸り声が聞こえてきた。


『そんな……勿体なさすぎるよ…国際レベルでやれるのに…なんでまた街の…』

「大袈裟ですよ」

『なにいって…っ! はあああぁぁ、まじかああ』

「お声をかけていただき、ありがとうございます」

『あああああ…、もったえねえええええ』


かーさんのコネで、むこうでコレペティを経験させてもらった僕。オペラの本番はオーケストラが入るけれど、練習のときはピアノが演奏して合わせる。その奏者がコレペティ。

そこで知り合ったひとからコンクールを薦められた僕。

そんなに大きくないコンクールだったから、ほんと気軽な気持ちで出てみたんだ。そしたら入賞なんかしちゃったりして。

ほら能ある鷹は爪隠すっていうじゃん。

僕さ、ほんと凄かったみたい。

音感がとくに優れているともいわれた。それからはどんどん声がかかるようになって——。



たくさん出たなあ。
楽しかった。

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