お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
これだけ危機感を感じることができれば、学校にも仕事にも毎朝行けるのかもしれない。
しかし、自慢じゃないが、わたしの生活にはそれがない。
たとえそれが社会からはずれるということであっても、それはすでに繰り返し続けた日常で、もはや危機でもなんでもないからだ。

髪を手ぐしで梳き、後ろにまとめる。
一応姿見の前に立った。
睡眠時間が少ないとこうなりますよって見本のようなアラサーの顔だ。
前髪も寝癖でぐっちゃぐちゃだが、仕方ない。
ゴミを出して、マッツに行くだけだ。
言い聞かせてメガネを探し、小銭入れをポシェットに入れて、肩からかけた。

「う~ん、ひどい恰好。」

家族や友達ならまだしも、わたしに高いお金を払って会いに来てくれる店の客や、ましてや好意を寄せている男性には絶対に見られたくない姿ナンバーワンって感じだ。

自分の姿に苦笑している場合じゃない。
7時55分。
行かなきゃ。

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