お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
予想通り、雨はやんでいた。
地面の濡れ具合を見るに、ついさっきまで降っていたらしい。

徒歩のため行き先はコンビニに決めた。
コロッケパンと、カップラーメンをいくつか買おう。

深夜2時をまわったこの街に、人通りはほとんどない。
スキップしても、くるくるまわっても、誰も見ていない。
雨雲が覆う暗い夜空に向かって、大きく伸びをした。
雨のにおいが体に入ってきて、自分のものになる。
この手のひらからあの空までの果てしなく大きい空間も、今だけはぜんぶ自分のものになったみたいだ。
息苦しい昼間の世界とは違う、わたしの世界。


お目当ての食糧を無事手に入れることができ、幸せの重みを右手に感じながらいつもの路地まで帰ってきた。
なんとか雨に降られなかったことに、ホッとする。
気分が弾み、傘とコンビニの袋を軽く振り回しながらアパートに近づくと、聞き覚えのあるゴォォゥという音が耳に飛び込んできた。


出た。

インテリメガネのいびきだ。



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