お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
その後、予定通り引っ越し業者が荷物を運びこみ、昼過ぎに引っ越しは完了した。
諸々の手続きもあるが、明日でいいや。
シャワーを浴びて汗を流し、何か出前でも頼もうかとスマホを手に取る。

布団を敷いて寝転がると、ふわりと実家の匂いがした。
布団がないのはさすがに困るだろうと、母が送ってくれたのだ。ありがたい。

彼氏と別れたこと、マンションを出ていくので一旦実家に帰ること、荷物を預かって欲しいこと、一度に伝えたとき母は驚いていたが、温かく迎え入れてくれた。
落ち着くまでこのまま実家に住んでもいいとも言ってくれた。
実家の方がかえって気を遣ってしまって落ち着かないので、早々に新居を決めてしまったけれど。

私の周りには優しい人がいる。
温かく接してくれる人がいる。

幸せだ。
じゅうぶんすぎるほどに。

何より今は気楽な気持ちだった。
彼氏も、4年半という長さも、結婚も、重荷だったのかもしれない。
当分は独りで気ままにずぼらに暮らしたい。
負け惜しみに聞こえるかもしれないけれど。

誰かと暮らす煩わしさから解放される。

それはとても楽しみなことで、思わずニヤけてしまった。

3年ぶりの独り暮らし、はじまりはじまり、である。



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