例えば危ない橋だったとして

ぼんやりと見つめ合った次の瞬間
黒澤くんの唇が、わたしの唇に触れた。


何が起こったのかわからず、目を見開いたまま、思考停止してしまった。

数秒その状態を保った後、唇が離れた。
瞼を開いた黒澤くんと視線がぶつかる。
その距離10センチ。


わたしは状況を飲み込むのに、更に30秒程要した。
頭が真っ白になって、軽く興奮状態だった。

今……キスした?


「……おやすみ」

呟いた黒澤くんは、僅かに頬を赤らめて見えた。
踵を返すと、数メートル先の駅の階段の中へと姿を消した。


えっ……。
何これ、キスし逃げ!?
彼のその有無を言わさぬ手法に唖然としながら、しばらくその場から動けなかった。

< 15 / 214 >

この作品をシェア

pagetop