例えば危ない橋だったとして
渡らないと決めていたのに

再び週明けを迎えた。
この週末も、わたしは考えていた。

やはり、リスクが高過ぎる。

普通の男子でも、彼氏などという人が出来たら、わたしはいちいち一喜一憂して疲れ果ててしまうだろう。
あんなイケメン相手なら尚更……。
他の女子達のやっかみも気になる。

黒澤くんのような素敵な人に言い寄られて、嬉しくなかったと言えば嘘になる。
正直、大分揺れていた。

だけど、何が何だかわからない部分も多い。
何故わたし?
何故いきなりキスしたの?
何を企んでいるの?
何も考えていないの?

『建前』という言葉を使った。
あれが、本当の黒澤くんなのか。


それに、わたしは黒澤くんに仕事を教わって行かなければならない立場。
これからという時に、関係がぎくしゃくしていてはやりにくい。

この月曜日も、黒澤くんは涼しい顔で仕事に臨んでいた。
だからわたしも、何事もなかったかのように振る舞う。
それが円滑な関係を築いて行く秘訣だと考えているから。


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