例えば危ない橋だったとして

チャイムが鳴り響く中、自分でもわかった。
みるみるうちに、顔が真っ赤に染まってしまったことを。
黒澤くんはわたしを見下ろしながら、見透かしたような微笑みを浮かべている。

「ねぇ……さっき見てたよね、俺のこと」

黒澤くんは更に攻撃を仕掛けて来た。
気付いていたんだ……益々顔が赤く火照って来たような気がする。
胸の当たりが、ドクンドクンと大きく音を立てている。
気まずくて押し黙った。

鐘よ……何てタイミング……。
先程、黒澤くんは時計を確認したんだと気付く。
わたしは時間の流れを恨んだ。
心臓の音がうるさ過ぎて、上手く働かない頭で、言葉を絞り出した。

「……あの……黒澤くん、食堂行かなきゃ」
「どうでも良いよ、昼飯なんて」

「こんな所誰かに見られたら……」
「昼休み開始早々、資料室に来る物好きはそう居ないと思うけど」

再度黒澤くんの顔がじりじりと近付いて来る。
わたしは唇を噛んで、黒澤くんを見上げる。

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