マザコン彼氏の事情
 翌朝、ちょっぴり頭痛がした。
 軽い二日酔い。
 結局あれから真保ちゃんは、三杯目を飲み干した。
 足取りは怪しかったけど、タクシーに乗り込んだので、ちゃんと帰れたと思う。
 わたしもふわふわしながらも、電車で帰った。
 遅い時間だったので、路地に入ると怖かったけど、誰にも会わずに家にたどり着いた。
 着いてすぐ、龍くんにメールする。
 すぐに返事が返って来た。
 きっと今か今かと待っててくれたんだね。
 ごめんね。
 それからシャワーを浴び、ベッドに入ったのは午前0時を回った頃だった。

「薬、飲んどこうかな」

 念の為、頭痛薬を飲む。
 仕事中に痛くなったら業務に響くから。 

「おはよう」
「おはようございます」

 げっそりとした真保ちゃん。
 こりゃ完全に二日酔いだな。

「岡嶋さん、気分悪くないですか?」
「少し頭痛がしてたけど、薬飲んだら治ったみたい」
「そうですか。やっぱり休日前じゃないとダメですね。仕事出来るかな……」
「大丈夫よ。わたしがフォローするから。それより、ありがとね。昨日は凄く楽しかった」
「わたしもです。またどこか行きましょうね」
「うん」

「おはようございます」
「あら、栗原くん」
「今日も俺、もしかしたら大口の契約取って来られるかもしれません」
「本当?」
「はい。二日続けて達成出来たら、聞いてもらいたい事があるんです」
「何?」
「まだ内緒です」
「何だろ? でも頑張って」
「はい」

 キラキラした目をした栗原くん。
 だけど、真保ちゃんの心配して欲しかった。
 隣の席にうつ伏せになってる彼女を心配して欲しかった。
 
「おはよう」
「あっ、龍くん」
「二日酔いにならかなった?」
「わたしは大丈夫だけど、真保ちゃんがちょっとね……」
「そのようだね」

 未だうつ伏せ状態の真保ちゃんを一瞥すると、彼は自分の席に歩いて行った。
 と、すぐに戻って来た龍くん。

「吉田さん、大丈夫?」

 死にそうな顔で龍くんを見上げる彼女。

「これ飲んでみて。二日酔いにけっこう効くよ」
「ありがとうございます」
「真保ちゃん、お水持ってきてあげる」

 給湯室で水を汲んで戻ると、龍くんはわたしの席に座って彼女を見守っていた。
 優しいね。
 だけど、ちょっと嫉妬してるかも。
 そんな事したら、龍くんに嫌われちゃうね。
 今までの彼女達のようにはなりたくない。
 
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