マザコン彼氏の事情
 福岡空港は街の真ん中にある。
 交通のアクセスも良く利便性に優れている。
 
 ターミナルから外に出ると、迎えのバスが来ていた。
 わたし達はそのままバスに乗り込んだ。

 バスではわたしが窓側、その横に真保ちゃん。
 通路を挟んで隣の席には栗原くん、そして窓側に龍くんが座っていた。
 四人並んだ形にはなったけど、外を見ていたら、反対側にいる龍くんは見えない。
 真保ちゃんは通路越しに栗原くんとしゃべっていたから、流れ行く外の景色をボーっと見ていた。

 晴れて良かった。
 これが雨だったらちょっと気が滅入っていたかも。

 バスガイドさんの饒舌なおしゃべりを聞きながら、わたし達を乗せたバスが別府の宿に到着したのはお昼頃だった。

 旅行に参加した社員は全部で四十七名。
 一つの宿には宿泊出来ず、歩いて行ける範囲にある四つの宿に分かれた。

 わたし達受注のメンバーと、営業部の一部が同じ宿になり、その中には真下さん、栗原くん、そして龍くんも居た。

 部屋に荷物を置き、お昼ご飯は大広間で頂く。
 今日泊まるのは和室の二人部屋。
 真保ちゃんと一緒の部屋だけど、夜はきっと栗原くんの所に行っちゃうよね?
 寂しいけど仕方ない。
 真下さんと飲み明かして、部屋に帰って爆睡しよう。

 食事を終えたわたし達は、グループに分かれて市内観光をした。
 グループを作るのは自由だったけど、真下さんが気を遣ってくれ、わたしと龍くんは別のグループになった。
 真保ちゃんと別れてしまったのは残念だけど、栗原くんと龍くんが一緒のグループに行っちゃったので仕方無いね。
 
 わたしは、真下さんにくっついて営業部の人と行動を共にした。

「岡嶋ちゃん、別府に来た事あるの?」
「はい。子どもの頃、二度ほど」
「そうなんだ~。俺は初めて来たよ」
「そうなんですか?」
「ああ」

 もの珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している真下さんが可愛く思えた。
 とても三十歳には見えない。

 地獄めぐりを済ませ、近くのカフェでコーヒーを飲んだ。
 龍くん達、今頃どこを観光してるのかな。
 考えないようにしてても、気が付けば彼の姿を探していた。

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