好きが涙に変わって溢れてく。

そのままずっと走り続けてどこに行こうか廊下をさ迷っていた時、急に足が止まった。



「桜綾ちゃん……‼」



腕を掴まれ振り返ると、そこには呼吸を乱した尊琉君がいた。



「よかった……探したんだぞ……っ」



ホッと安堵して大きく胸を上下させる尊琉君。


どうして……



「私のこと、嫌な奴だって思ったでしょ?」



さっきの冷たい目が忘れられない。



「明菜の言ってることが、正しいって思ったでしょ?」



何度も何度も頭に浮かんでくる。



「私のことなんて……っ、信じてくれないんでしょ!?」



あの時の魁と一緒に。





魁の軽蔑したあの顔が、何度も私を闇へ突き落とす。


どうせ男なんてみんな可愛い子の味方。

涙の味方なんだ。



悔しくてたまらなくて。


どうして私は明菜よりも可愛くないんだろう、なんてことも思ってしまう。



尊琉君は何も悪くないのに、怒鳴って睨み付けてしまった。


自分で自分を最低にして、バカだ私。



絶対に怒られると思った。



なのに――……








「信じるよ」



それはあまりにも突然で、声も出ない私。


温かい……そう感じる時には、私の体はギュッと尊琉君の腕に抱きしめられていた。



「決まってんだろ?桜綾ちゃんがそんな奴じゃないって、わかってるって言ったじゃねぇかよ」



私の頭の中はずっと止まったまま。


尊琉君の抱きしめる腕が、強くなっていく。



「だからさ、逃げたりすんなよ。桜綾ちゃんは何も悪くないんだから。堂々としてたらいいんだよ」



そっと頭を撫でられ、私はきゅっと目を瞑った。

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