狐のゲーム[復讐の月]
第1章「異世界」

第1話「チャイム」


キーンコーンカーンコーン…

キーンコーンカーンコーン…

「ん…?」

聞き慣れた学校のチャイムが
耳を刺激し、少女は目を開ける

腕を枕代わりにして教室の机で寝ていたため
顔をあげて寝ぼけた目で辺りを見渡す

「え…!?」

窓の外は暗く
教室の電気はついていたものの
自分以外誰もいなかった

「うそっ…、夜っ!?」

(なんで誰も起こしてくれなかった!?)

夜まで寝ていたのかと
慌てた少女は机にかけてあった
バックを引っ掴んで教室のドアに
手をかけた

「あれ…?私、授業中も休み時間も
寝た覚えないんだけど…。
まぁ、いいや!早く帰らなきゃ!
あっ、閉まってるかなぁ…?」

真面目で授業は真剣に受け
休み時間も友人とおしゃべりを
していた少女は疑問を持ったが
それより帰宅の事に頭がいき
教室を後にした



下駄箱まで走って 走って
ようやく辿り着いた少女は
息を切らしながら靴を履き替えながら
溜息を漏らした

「はぁ…、これ閉まってたら
どうしよ…。いや、もう
見た感じ閉まってるけど…。
最悪すぎる…。」

そう呟きながら靴を履き終え
閉まっているドアを開けようとする

ガチャッ

「だよねー…。」

鍵のかかっている音を聞き
途方に暮れていると…

「矢島さん?」

「きゃあっ!」

少し後ろから突然声がかかり
恐る恐る振り向いてみると
そこには最近転校してきた
瀬戸内雅(せとうちまさ)がいた

「ごめん!驚かせるつもりは
なかったんだけど…。」

「う、ううん…。大丈夫!
でも、瀬戸内君。
なんでこんな時間に?」

「矢島さんこそ。」

「私…寝てたみたいで…。
こんな時間まで…。」

恥ずかしくなり顔を伏せると
ふふっと雅が笑った

「瀬戸内君!」

「ごめんって。お詫びに
送ってくよ。一緒に帰ろ。」

「え…あ、うん!」

顔を赤らめた少女
矢島沙代(やじまさよ)は
大きく頷く

そう、彼女は雅のことが
好きなのだ
所詮一目惚れというやつだ


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