クールな社長の溺愛宣言!?
プロローグ
 大きなガラス窓から差し込む夕陽が、彼の整った顔を照らし出す。
 
さっきまで上司と部下だった私たちの間に流れる空気が、一瞬にして変わる。

「業務時間は終わりだ、梓(あずさ)」

「い、いきなりなにをおっしゃってるんですか?」

 椅子から立ち上がり、一歩また一歩と私に近づいてくる。

「なにって……社長と秘書の時間は終わりだ」

 手をグイッと引っ張られて、あっと言う間に距離が近づく。石鹸のような甘いムスクの香りが鼻先をかすめると、胸の鼓動がさらに速くなった。

「ほら、俺と思う存分恋愛すればいい。それがお前の希望だろう?」

 確かに恋愛がしたいと言ったのは私だ。だけど……まさかこんなことになるなんて。

「ちょっと、待ってください」

「待たない。待つのは俺の主義じゃない」

 どんどん近づいてくる社長の顔。数センチの距離で目が合う。

 いつもはクールなその瞳に熱がこもる時――。

 私は彼に逆らえなくなる。その視線にとらわれて、溶かされて、理性を失いそうになってしまう。

 夕陽で彩(いろど)られた社長室で、私は静かに目を閉じた。
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