きみを見ていた
「俺、最初に言ったよな
これまでの授業とは違うから覚悟しろって、な?」

「は...い。でも、先生のピアノ演奏聴いてたら
なんだか眠気が..あ!ちがくてあまりにも心地よくて
その、えっと」

「ま、いいさ。約束は約束だ。
山田メイ、放課後音楽の補習だ!以上」

「えっ?それは困ります!」

「学級委員!」

「起立、礼」

足早に音楽室から出て行く磐座先生に私は心の中で叫んだ。

待って--!!超絶イケメ--ン!!


昨日は高2の新学期。
あまりのビジュアルショックで全校生徒の度肝を抜いたこの磐座涼先生。
欧米の楽団で指揮者として数年活躍した後帰国。
音大時代に教職免許を取得しており、わが校理事長とも昔からの知り合いだとかでやって来た。


「せ、先生!私放課後直ぐ帰らないといけないんです!」

コンパスの長さが違いすぎる!
私はほぼダッシュに近かった。

「そうか、じゃぁ、なおさら早めに補習を終えて帰らなきゃな」

「え、あの...家庭教師の先生が待ってるんです」

息が切れる。

「知らん。補習は補習だ」

「そんな、先生!お、お願いしま...」

目の前で職員室のドアがバタンとしまった。




< 2 / 37 >

この作品をシェア

pagetop