【完】キミは夢想花*


「ごめんなさい。遅くなる」



だから私は遅くなると答えた。



「...そう」



お母さんの寂しそうな声が耳に届く。



ドアの向こうでは、どんな顔をしているんだろう...

想像してみたが心苦しくなりすぐにやめた。



「お母さんハンバーグとケーキ作っておくから、帰ってきたら食べてね」



そう言い残すとお母さんはドアの前から去って行った。



ハンバーグは私の好物。



よく小さい時、



『お母さんのハンバーグは世界1美味しいね』



と言っていたのを今でも覚えている。



あの頃は何も知らなくて、ただただ幸せだった時間。



私の誕生日になるとお母さんは決まって、ハンバーグとケーキを作ってくれた。



そう。

今日7月8日は私の誕生日なのだ。



だから私は椿に会いたかった。

彼に会って、少しでも色づいた世界を見たかったのだ。

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