Android

初仕事



――…



「結斗様、神崎様がお見えです」


「ありがとう。今向かうよ」


叶家には、「魔力人形」を欲して訪れる人々や

人形について悩みを抱えた人々が相談に来る事が多々あった。

それらに対応するのも、仕事の一環なのだ。


「お待たせしました」


「あら、結斗様ではないですか?!
いつ日本へ戻られたのですか?!」


「つい先日、父の後を継ぐために戻ってきました」


「では、今は結斗様がご当主に?
お若いのに立派ですわね」


いえ、と軽く手を振って、結斗はソファに腰掛ける。

客人である神崎夫人にも座るように促す。


「今日はどのようなご相談で?」


「実は…旦那様に魔力人形を創っていただいたのですが…」


神崎婦人の話は、つまりこういう事だった。

娘の誕生祝に、結斗の父が作った

「魔力人形」をプレゼントしたら

娘はその人形をとても大切にするようになり

それまで大切にしていた人形には目もくれなくなった…と。

「私の勘違いだといいのですが
時々その人形が
私をずっと見ているような気がして
…怖いんです…」


真剣に話を聞いていた結斗が、口を開いた。


「事情は解りました。
では、ご自宅までお伺いいたします」


そう言って結斗は立ち上がり、神崎邸に向かったのだった。



< 8 / 62 >

この作品をシェア

pagetop