とあるレンジャーの休日
眠れない夜、再び

10

 
 その夜――
 夜更け過ぎに、扉の外から声をかけたら、歩はやはり眠れずに起きていた。

 紫乃は、昨夜と同じように部屋の中へ入り、布団に寝転がっていた彼の隣で、横になる。
 歩も、今度は抵抗しなかった。

「全然眠くないの?」

 そう訊ねたら、彼は首を横に振る。

「眠いは眠いよ、いつも。でも一人だと色々考えちゃって。身体は眠ろうとするけど、頭は眠れないって感じ」

 紫乃がいないと、どこか緊張しているようだと彼は言った。
 身体は程よく疲れているはずだから、精神的なストレスが原因になっているのは確かだろう。

 昼間の膝枕でのうたた寝は、夕飯の支度をする時間になって紫乃が慎重に足を抜き、彼を寝かせて立ち上がった途端、目を覚まして終わっていた。

「紫乃はさ……」

「ん?」

 何か言いかけてこちらを向いた歩の目を見つめ返す。
 彼は紫乃の頭に手を伸ばし、前に垂れていた彼女の横髪を、指で優しく掻き上げた。
 その感触に、ドキリとする。

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