とあるレンジャーの休日
その間に、歩は建物から少し離れて、家全体を眺めた。
すると、二階のベランダに面する窓の一つが半分ほど開いていることに気付く。
即座に目を凝らし、侵入経路を模索した。
(壁伝いに上がれる――!)
ちょうど紫乃が電話を切るのと同時に、歩は走り出す。
いきなり壁に向かって突進していく彼に、紫乃は驚き、ただ呆然とそれを見つめるしかない。
歩は重力を無視するかのように壁を大きく蹴りながら駆け上がった。
二歩目でジャンプし、ベランダの柵に飛びつく。
そして息を吐く間もなく、その柵をひらりと乗り越えていった。
紫乃は、歩本来の身体能力を目の当たりにして、瞬きすることも忘れ、ただただ呆然とするばかり。
――なんという美しさだろうか。
野生動物のようにしなやかで、一切無駄のない動きだった。
その直後、家の中から階段をダダッと駆け下りる音がして、すぐに玄関ドアが勢いよく開いた。
「紫乃っ!」
彼女はハッとし、すぐに走り出す。