とあるレンジャーの休日
責任という名の鎖

17

 
 中野のおばあちゃんはなんとか一命を取り留めた。

 一番近い私大の附属病院に入院し、意識はまだ戻らないものの、峠は越えた。

 隣県に住む長女が、夜になってようやく病院に到着する。
 紫乃は彼女に、発見した時の状況や病状などを詳しく説明した。
 長女も紫乃のことはよく知っており、紫乃を責めるようなことはなく、「世話をかけて申し訳ない」としきりに謝っていた。






 紫乃が歩と一緒に病院を出た時、時計の針はもう20時を回っていた。

 昼食を取る時間はなく、夕方頃、病院の中にある喫茶店で軽食を取ったきりだ。
 紫乃はあまり食欲を感じなかったが、歩は空腹のあまりお腹をグーグー鳴らしていた。

「ごめんね、こんな時間まで付き合わせて」

「いや、逆だし。じいちゃんから紫乃のことを任されたのは、俺だからね」

 歩は得意げにそう言って笑う。
 紫乃もクスリと笑って彼の腕を取り、そのまま歩いた。

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