とあるレンジャーの休日
戸ヶ崎道場

04

 
 紫乃が診療所に行ってしまってから、歩は途端に何をしていいか分からなくなり、困り果てた。

 ここに着いてすぐ強烈な睡魔に襲われ、実は貴重だった紫乃と二人きりの時間を、眠ったまま過ごしてしまったのだ。

 歩はトイレの場所すら分からない状態で、居間に一人、取り残されている。

――いざとなったら、診療所に行けばいい。
 紫乃だって、まさか顔を出したくらいで怒ったりはしないだろう。

 歩は気持ちを切り替えると、改めて部屋の中を見回した。

 診療所の外観もそうだったが、建物が全体的に古く、でも壁や柱は重厚な造りになっている。
 インテリアは無駄な物がなくスッキリしていながら、アースカラーで統一され、落ち着いた印象だった。

(紫乃の趣味かな)

 夕飯の支度に、歩の部屋の準備。
 自分が寝落ちている間に全て済んでいた。
 これまでの話からすると、同居しているのは紫乃と、彼女の父と祖父だけ。
 ということは、家事は主に、紫乃が仕切っているのだ。

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