君が涙を忘れる日まで。
「あった、あそこだ!」

鳴り響く音楽に掻き消されないように、大きな声でそう言って指さした。


遠くからホットドッグの文字が見えて、店のテントの中には頭に青いバンダナを巻いている香乃の姿があった。


歩きながら、私は修司の顔を見上げる。

「あのね、修司」

「ん?」

「朝修司から連絡があったとき、私軽くてんぱっちゃってさ。でも……香乃が落ち着かせてくれたの」


一人だったらきっと、私はただ泣いて謝るだけだったと思う。

そして泣いたまま文化祭が始まって、納得のいかないまま終わって、それでもまだ、私は泣いていたと思う。



「香乃がね……修司にフライパンとかコンロとかの確認しろって言ってくれたのは、香乃なの。だから香乃がいなかったら、私は……」


「お前らの関係ってほんといいよな。全然違う性格なのに、上手くバランスが取れてる」

「うん。そうだね……」

「奈々も香乃も、ありがとな。俺、大丈夫だっていいながら、出来立てのポップコーンが出せないと思った時、少し残念だって思ったんだ。自分ではなにもできなかったのに、二人のお陰だよ」


修司の言葉に、私は俯いて何度も首を振った。

文化祭の準備の時、修司は一番頑張ってた。部活もあるのに、家でも飾りつけの作業を手伝って、みんなをまとめて。


「香乃にも後でお礼言っとくから」

「うん。私ももう一回香乃にお礼言う。ホットドッグ、楽しみだね。香乃めっちゃ楽しそうに作ってるし」

「そうだな。香乃のスマイルで五百円くらい取れそうだ」

「ほんとだね……」



私……修司の彼女になりたい……。

仲の良いクラスメイト、部活仲間じゃなくて、修司の彼女として……隣にいたい。


勇気を出してもいいですか?

あなたは……笑ってくれますか?


でも……。






ーーーさよなら、文化祭。




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