君が涙を忘れる日まで。

「なにがあったんだよ」

腰を屈め、心配そうに香乃の顔を覗き込む修司。


「後は香乃から聞いて」

私はそう言って二人に背を向ける。



「待って奈々!私、私……」


香乃の声に足を止めた私は振り返り、微笑んだ。


「やっぱ早起き辛いから、明日一緒に学校行こう」



大丈夫、きっと上手く笑えてる。


これ以上香乃を苦しめないために、香乃のためなら私は笑えるから。




教室を出て廊下を歩いていると、足音と共に私を呼ぶ声が聞えた。


「奈々、奈々!」

「修司……」


「あのさ、ありがとう……。俺なにも気付けなくて。ありがとう、奈々」


名前を呼ばれると、まだ胸が痛む。

優しく微笑みかけられると、泣きたくなる。


「早く香乃と一緒に部活戻りなよ、先輩に怒られるよ。ってヤバい、私もだった。じゃーね」



走り出した私の視界が、白く霞んでいく。


忘れよう……。

大好きな二人のために。







ーーさよなら、私の恋。




 ・
 ・
 ・
 ・
 ・





< 70 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop