世界が終わる音を聴いた

「でもな、芦原。聞く相手を間違っちゃいないか?……どうしようもなく不器用なところは、相変わらずだな」

くすりと笑って、花守さんは私の頭を撫でる。
なにもかもお見通しとでも言わんばかりだ。

「……どうにもしようが無いことも、世の中にはあるんですよ」
「それは、そうだな。でも、自分の好きな人のことをみくびってちゃダメだと思うよ。芦原の想いが成就するにしろしないにしろ、関係性はきっと変わらない」
「そう、ですかね」
「もっと人を信じろよ」
「優しいですね、花守さん」
「今ごろ気づいたか」

いいえ、ずっと知っています。
それは空気にはのせなかったけれど、多分伝わっていて、言いたいことだけ言って花守さんは去っていく。
その後ろ姿は、あの頃と同じく、優しくて大きい。

「花守さん!」

呼び掛けると彼は振り返ってくれた。

「ありがとうございます。あと、……最後に、わがままひとつだけ聞いてもらって良いですか?」
「何?」
「ストリートのつて、まだもしあったら。私が居なくなってしまったら、使っていたギターを幹大って人に渡してほしいんです」
「幹大?」
「かつての私の……chiyaの、ファンだって言ってくれたの」
「……わかった。“もし”そんなことがあったなら、どんなことしてでも渡しといてやるよ」

ニヤリと笑って、今度こそ花守さんは去っていく。
その後ろ姿に、ありがとう、と呟いた。
辺りはもう赤く染まって、住宅の隙間に太陽が沈んでいくのが見えた。


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