世界が終わる音を聴いた

眠っていた私の耳に、小さな物音が届いた。
カタン、と、なにかが倒れたような、落ちたような。
固い音が、聞こえた。
その音に反応して、びく、と肩が震えた感覚が微かに自分を目覚めさせる。
覚醒しきらない頭で、そっと目を開いた。
寝ぼけ眼で起き上がり、見回すと、部屋には西日が差し込んでいて、オレンジに染まっていた。
別段変わったところは見えない。
当たり前だ。
ずっと一人で寝ていたのだから。

ふわりと風が入る。
夏とはいえ、日が暮れてくるまで窓を開けっぱなしにしておけば、それなりに冷える。
そろそろ閉めないと、と思うと、風の形を捉えるようにカーテンが揺れた。
自然と、窓に目をやれば、さっきまでは何もなかったはずのそこに、見知らぬ人が座っていた。

窓枠に腰かけて、真っ赤な夕日を背に、真っ白なスーツを着て真っ黒な髪を垂らしたその人は、落ち着いた声で言った。

「お前の命の期限はあと1週間。限られた時間をどう生きるのかはお前次第だ」

時間が止まっているのではないかと思うくらい静かな部屋に、やけにはっきりと、くっきりと私の耳に届く。
私はまだ、夢を見ているのだろうか?

逆光でその人の表情は私から見えない。
笑顔のような気もするし、無表情のような気もする。
垂らした髪は肩を通りすぎるくらいまであって、パッと見た目では男女の判別もつけづらい。
その声音から察するに、男性なのだろう、というくらいだ。

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