忘れたはずの恋
「しかし吉永さんが集配に行くのは痛いね」

私より2歳年下の武田さんが頭を抱えた。

「大丈夫ですよ。
武田さんがいれば無敵です」

彼女も2年前に転勤してきたけれど、中々のやり手。
年下なのに時々年上に見える。

「いや、それがですね。
総務部長にはもうお話しているのですが、私、つい先日妊娠している事がわかりまして…」

「「え〜!」」

私と大東さんは絶叫。
周りは一瞬静まり返ったので平謝りをする。

「まあ何らかの形で補充はあると思いますけど、これが吉永さんの異動が決まる前にわかればきっと吉永さんは異動しなかったと思いますよ」

武田さんの言い分は一理ある。

「いいなあ、武田さん」

大東さんは羨ましそうに頬杖をつく。

「私も早く結婚したいなあ」

何を言う、若者よ。
私、まだ結婚してないわよ。

「夫の友達も結婚相手を探している人がいるんだけど、どう?」

「え〜、是非お願いします!」



盛り上がっている隣で私はこっそりとため息をつく。

胸が痛い…
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