風の子坂を駆けぬけて

小さく大きな教室



運動会後、秋の遠足に音楽会と、定番の学校行事も一通り終え、少しずつ寒くなってきた頃。



仲良し4人組みにある事件が起きた。





事の発端は明日香の何気ない一言だった。

「見て見てこれ、新しいペン買ったんだ!」

「キレイだねー、いいなあ。どこで買ったの?」

「駅の中に入ってる、えっと雑貨屋で…」

「あー!それ早速使ってるんだ?私も明日持ってこよう」


知優と明日香の会話に胡桃が割って入ってくるなり、知優には検討のつかない内容。


「くーちゃんも持ってるの?」

「うん、土曜日ね、あっちんと出かけたんだー。そこでね、お揃いのペン買ったんだよね」

「そうそう。この色すごい気に入ってさー」

「私はね、ピンクにしたんだー。てかさ、電車で出かけたのって初めてだよね」


楽しそうに出かけた時のことを話す2人を前に、知優は話の内容に付いていけず、ぼーっとしていた。


(何、どういうこと?くーちゃんとあっちんで出かけてたってこと?私、何も…)



「へぇ、そうだったんだ」


結局その場で言いたいことは言えず、次の授業が始まり、この話は遮られた。


何だか釈然としない知優はモヤモヤを抱えたまま、放課後を迎えた。









< 56 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop