目覚める度に、傷ついて
告白
家に帰ったあたしは母親に連れられたリビングにいた。


そこにはテレビを見ていたお父さんの姿があった。


思っていた通り、すごくカッコいいお父さんだ。


何歳かわからないが、見た目はまだ30代くらいに見える。


少し茶色く染めた髪の毛に、オシャレな黒縁眼鏡。


スラリとした手足を見ると、タレントにも負けない容姿だ。


「あなた、ちょっとこの子の話を聞いてくれる?」


母親はそう言うと、リモコンでテレビを消した。


途端に静けさが舞い降りてきて緊張が走る。


「どうしたんだ?」


父親はおっとりとした口調でそう聞いてくる。


あたしはその場に立ったまま拳を握りしめて父親を見つめた。


「あたし、今の事務所やめたい」


ハッキリとそう口にした。


帰って来るまでに落ち着いたおかげで、さっきみたいに震えてもいない。


「突然どうしたんだ?」


父親は眼鏡の奥の目を見開いてそう聞いて来た。


「そうでしょう? せっかくあんなに大きな事務所に入れて、神崎さんにも目をかけてもらえてるのに。事務所を辞めるってことはね、神崎さんを裏切るってことなのよ?」


母親が険しい口調でそう言った。
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