目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

ピーチーズの無料コンサートは1時間ほどで終了した。


コンサートが終わった後も体が熱を帯びていて、心臓はいつもよりも高鳴っている。


車に戻ってしばらくしてもその熱は引かなかった。


「すごい……」


コンサート帰りの渋滞にはまった車内であたしはそう呟いた。


「でしょ? やっぱりあの子たちはすごいわね。テレビにだってもうすぐ出始めるはずよ」


助手席に座っている母親が興奮気味にそう言った。


あたしは何度も頷く。


テレビの中で歌って踊っている子たちと同じくらい、実力があるんじゃないかと感じていた。


「ユメノは、まだアイドルが好きか?」


運転席の父親にそう聞かれて、あたしは大きく頷いた。


あたしの気持ちだけじゃない。


体の奥から好きだという感情が突き上げて来るのがわかった。


それはどうしようもなく、胸の奥でくすぶり続けている感情だった。


いつか自分のあのステージに立ちたい。


衣装を着て、最高のパフォーマンスで魅了したい。


そんな気持ちが今にも爆発してしまいそうだった。


「そうか、それならよかった」


父親が嬉しそうな声でそう言った。
< 140 / 202 >

この作品をシェア

pagetop