目覚める度に、傷ついて
「うん。それで、喧嘩してるのを聞いちゃったの」


穂月を引き取らなければよかった。


そんな内容の言葉が思いだされ、胸がギュッと痛くなる。


「そんな……ごめんなさい私のせいだったのね」


助手席に座る母親が手で口元を押さえてそう言った。


今にも泣いてしまいそうなのがわかる。


「そ、そういうワケじゃなくて……」


慌ててそう言うけれど、どう言っていいのかわからなくて途中で口を閉じてしまった。


あたしは誰かのせいにしたいんじゃない。


なにか問題があるならそれを解消して、穂月を楽にさせてあげたいだけだ。


「ごめんな穂月。お父さんとお母さん、最近喧嘩してばかりだったよな」


運転しているお父さんが申し訳なさそうな声でそう言った。


「だけどな、穂月を引き取らなければよかったなんて、本気で思っているワケじゃないんだ。お父さんたちはずっと子供ができずに悩んでいて、施設で穂月を見た時に天使みたいに見えたんだ。



君は両親に捨てられて施設にいると言う現実も知らずに、とても可愛らしくほほ笑んでいた。子供の無垢な心を目の当たりにして、自分の心まで浄化されるようだったんだよ」
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