目覚める度に、傷ついて
あたしは手首を撫でてそう呟いた。


剃刀の後だけじゃない、奏をふくめたあいつらに付けられた青あざもない。


あたしの体はどこを見ても綺麗なものだった。


違和感はそれだけじゃなかった。


『うそ』


と呟いたその声が自分の物とはかけ離れていたのだ。


あたしはキュッと喉の奥が閉まる感覚を覚えながらそっとベッドから起きだした。


あたしの部屋には大きな鏡が置かれているけれど、この部屋にはない。


代わりに、小さな三面鏡が机の上に置かれていた。


ゆっくりと歩いて机に近づいていく。


見たくない。


けれど見なければいけない。


そう思い、三面鏡の前にたった。


唾を飲み込むとゴクリと大きな音が鳴った。


身をかがめて鏡の中の自分を確認する。


そこに立っていたのは、間違いなく武元奏だったのだった……。
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