キミの笑顔が見たいだけ。


「それより、大丈夫か?頭痛くなったんだよな?病院行っとく?父さんにも連絡しといたから」


「ううん……もう、大丈夫」



1歳下の海生はあたしなんかよりもずいぶん大人びていて、しっかりしている。


たまにヒヤッとする冗談を言ったりもするけど、基本ストイックで真面目な性格。


背が高い海生と並ぶとチビのあたしは妹のように見えるらしく、よくまちがえられた。


お父さんいわく、顔は2人ともお母さん似らしい。


「冷えちゃったから、シャワー浴びるね」


起き上がろうとしてみたけど、目の前がクラッと揺れてバランスを崩す。


体に力が入らなくて、布団の上にドサッと崩れ落ちた。


「バカ、もう少し休んでろって。倒れたんだぞ?」


「うぅ、もう大丈夫なのに……」


「菜都のそれは信用出来ない。頼むから……もう少し寝てろ」


眉尻を下げて切なげな表情を浮かべる海生。


気丈に振る舞っていても、海生の目を見れば何を考えているのかがすぐわかる。


……ごめんね。


心配してくれてるんだよね。


「もう少しだけ、寝とく。30分経ったら起こして」


「ん、わかった」



そんな会話を交わしたあと、目を閉じるとすぐに夢の中へと引き込まれていった。


< 10 / 222 >

この作品をシェア

pagetop