キミの笑顔が見たいだけ。


「実はクリスマスに高垣君と遊ぶことになったの!それでね、菜都にプレゼント選びを手伝ってほしいんだ」


「わー、そうなんだ?いつの間にー!」


クリスマスデートか。


いいな。


「菜都も矢沢君を誘ってみれば?」


「な、なに言ってんの。ムリに決まってるじゃん」


「なんで?確実に両想いなのに!っていうか、いい加減くっつきなよ」


からかうように花純が笑った。


あたしだって……出来るならそうしたい。


でも、ムリだから。


唇をグッと噛み締める。


「さ、早くプレゼント選びに行こっ!」


「わ、ちょ、菜都ー。引っ張らないで」


「花純がボサッとしてるからでしょ」


花純の腕を取って中に進む。


なんとかごまかすことが出来たけど、プレゼントを選ぶのにウキウキしている花純と同じような気持ちにはなれなかった。


どこか上の空で、心から楽しめていないあたしがいる。


「あ、これいいかもー!菜都はどう思う?」


「え……?」


突然意見を求められてハッとした。


やばい、聞いてなかったよ。


「さっきからボーッとしすぎー!これどう?って聞いたんだけど」


花純が手に取ったのは革のブレスレット。


デザインがオシャレで、すごくカッコいい。


「ごめんごめん!うん、いいんじゃないかな」


頬を膨らませる花純に愛想笑いでごまかした。


そのあと花純の希望でパスタのお店に来たけど、食欲はまったく湧かず。


「なんかあったでしょ?」


それを花純にも見抜かれちゃったようだ。


「やだなー、何もないよ」


頬が引きつっているような気がするけど、うまく笑えてるよね。


笑わなきゃ。


ごまかさなきゃ。


「あたしには言えない?菜都のことを親友だと思ってるのは、あたしだけなの……?」


だんだん真剣味を帯びていく花純の表情。


ウソの笑顔に効果はなかったみたい。


「菜都はいつも、何も話してくれないよね。矢沢君のことだって……」


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