キミの笑顔が見たいだけ。

押された背中〜晶斗side〜



なんだよ、話って。


改めて言われると、気になって仕方なくなる。


騒がしい場所でするような話ではないのか、菜都はどこかに向かって歩き出した。


その後ろ姿はかなり弱々しくて、今にも壊れてしまいそう。


ふと後ろから抱き締めたい衝動に駆られたけど、ガマンガマン。


触れたい。


菜都にもだけど、その心にも。


「矢沢君って、電車に乗ったことある?」


「は?」


なんだよ、いきなり。


「あたしはあんまりないんだ。学校も徒歩圏内だし、他の駅に用事もなくて。小さい頃から、ほとんど車だったしね」


「…………」


マジでいきなりなんなんだ?


ただ世間話がしたいだけなのか、それとも電車に乗りたいのか、意図が読み取れない。


「だからさ、電車に乗ってみない?あたし、終点まで行ってみたい!」


あ、やっぱ乗りたかったのか。


いきなり突拍子もないことを言うから、何事かと思ったけど。


「あ、でも家族でクリスマスをお祝いするんだっけ?じゃあ終点まではムリかぁ」


なんでそんな残念そうな顔をするんだよ……?


俺といるのがツラいんだろ?


一緒にはいられないって言ったくせに、わけわかんねーよ。


「大丈夫だ。終点まで付き合う」


「ホント……?」


パァッと明るくなる菜都の表情。


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