キミの笑顔が見たいだけ。


「5%……だそうだよ」


「なにが、ですか……?」


そんなこと、聞き返さなくても本当はわかってた。


唇を噛みしめ、拳をグッと握る。


「目を覚ます確率は、たったの5%だそうだ……」


「……っ」


血の気が引いていくような気がした。


5%って……っ。


冗談だろ。


フラフラとおぼつかない足取りで菜都のそばに立つ。


枕元には俺があげたネックレスが、透明の袋に入った状態で置かれていた。


「これ……」


「菜都が大切にしてたネックレスだ。手術の日も、ギリギリまで握りしめていたんだよ」


「……っ」


ネックレスをあげた時の菜都の笑顔が頭に浮かんで、思わず涙が溢れた。


だけどこんなところで泣けるかよ。


菜都の前で泣くなんて、みっともない。


「ゆっくりしていくといい。一旦ホテルに戻って仮眠を取ってくるから、頼んだよ」


そんな俺に気を遣ってくれたのか、おじさんはこの場を去った。


やっと会えたっていうのに現実は残酷で、目の前がボヤける。


「なぁ……頼むよっ。お願いだからーー」


動かない菜都の手をキツく握りしめた。


「頼むから……目ぇ、開けろよ。帰ってくるって……言っただろ?」


俺に会いに来るんじゃねーのかよ……?


「起きろって……なぁっ」


頼むから……っ。


< 196 / 222 >

この作品をシェア

pagetop