キミの笑顔が見たいだけ。


矢沢君に見つめられると、全身に熱が注がれたように熱くなる。


ドキドキして胸が苦しくなって、うまく息が出来ない。


あの雨の日から、こうして目が合う回数が極端に多くなった。


目が合う度にドキドキして落ち着かなくなる。


どうしてこんなに胸がざわつくんだろう……。


「矢沢君ってさぁ、よく菜都のこと見てない?好きなのかもよ、菜都のこと」


「!?」



イタズラッ子のようにニンマリ笑う花純は、あたしたちが見つめ合っていることに気付いたようだ。


絵に描いたような優等生の花純は、学年のマドンナでスタイル抜群で美人で。


どこを取っても劣っているところがないほど、なんでも完璧にこなす天才肌。


愛嬌があって可愛い一面もあれば、サバサバしている面もあったりして。


明るくて無邪気な性格が可愛い、あたしの一番の大親友。


「な、なに……言ってんの!ありえないから、そんなこと!」



思わず身振り手振りで必死に否定する。


顔が熱くて、手でパタパタ仰いだ。


花純は突然突拍子のないことを言い出すから困りもの。


矢沢君が……あたしを好きだなんて。


そんなの、天と地がひっくり返ってもありえないよ。


「ありえるでしょ。今、すっごい噂になってるし。少なからず、菜都も矢沢君を意識してるんじゃないの?」


「そ、そんなこと……!」


ある……とは素直に言えない。


だって、すごく恥ずかしいし照れくさいもん。


< 20 / 222 >

この作品をシェア

pagetop