キミの笑顔が見たいだけ。

ねぇ、笑って



「……都っ!」


誰かが必死にあたしの名前を呼んでいる。


誰……?


「菜都っ!」


どこか聞き覚えのある懐かしい声。


なぜか焦っているようだけど、どうしたのかな。


っていうか、あたし……どうなっちゃったの?


アメリカで手術を受けたんだよね?


死んだのかな。


それとも……。


「早く戻ってこい!」


戻る……?


あたし……まだ、生きてるの?


まぶたが重くて目を開けられない。


それに頭がなんだかボーッとする。


体に力を入れようとしてみても、ピクリとも動かなかった。


すごく変な感じ。


あたしはいったい、どうしちゃったんだろう。


だんだんと思考がクリアになってくると、周りの音がやけにリアルに響いた。


知覚も戻って、誰かが頬に手を当てているのがわかる。


温かくて、大きな手だな……。


触れられていると、とても安心する。


< 210 / 222 >

この作品をシェア

pagetop