キミの笑顔が見たいだけ。


いや、でも、聞き間違いに決まってる。


だって、こんなところにいるはずがないんだから。


「菜都っ!」


「え……?」


今度は鮮明に聞こえて、キョロキョロ辺りを見回した。


すると、人の間をかき分けるようにして姿を現した声の主。


「晶斗、どうしたの?」


仕事なんじゃなかったの?


目をパチクリさせていると。


「俺も行く」


「え?」


「菜都ひとりで飛行機に乗せるのは心配だから、俺も行く」


「だ、大丈夫だよ。それより、仕事は?っていうか、なんでスーツ?」


ネクタイをピシッと締めて、黒光りする革靴でカッコよく決めている。


「あー……仕事は、やめた」


「えっ!?」


やめた?


なんで?


わけがわからなくてパニック状態。


「仕事引き継いだり、残務に追われてギリギリになったんだ」


コツコツと音を立てながら、ゆっくり近づいてくる。


珍しくスーツなんか着ているせいで、なぜかすごくドキドキした。


< 221 / 222 >

この作品をシェア

pagetop