キミの笑顔が見たいだけ。
「もうちょいこっち」
「あ……うん」
半歩くらい近寄ると肩と肩が軽く触れた。
ーードキン
チラッと見上げた整った横顔が徐々に赤くなっていく。
思わずじっと見つめていると、そのまま目が合ってしまった。
それだけで、こんなにも胸が締め付けられる。
矢沢君はコホンと咳払いをひとつして、プイとあたしから目をそらした。
「ほら……早くレンズ見ろよ」
「ご、ごめん」
ちょうどいい具合いに、スマホの画面の中に収まったあたしと矢沢君。
優しくはにかむ矢沢君を見て、あたしも慌てて笑顔を作った。
わー、引きつってないかな。
恥ずかしい。
「撮るぞ」
「う、うん」
ーーカシャ
「撮れた?」
「おう」
「見せて見せて」
「ん」
スッと差し出されたスマホの画面の中に、緊張気味に笑うあたしと、優しくはにかむ矢沢君が写っていた。
こんな矢沢君の顔はなかなか見れないから、かなりレアだ。
しかも、王子様の衣装でのツーショットなんて嬉しすぎる。
お姫様の衣装はピンクのフリル系で子どもっぽいけど、ちんちくりんのあたしには似合ってる。
「この写メ、あたしにも送って」
「ん、わかった」
矢沢君の笑顔を見ていると、なんだか心が温かくなる。
だからね……。
矢沢君にはどんな時でも笑っててほしい。