現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
――十七時半。
終了のベルが鳴る。

そのベルが聞こえると、動いていた機械が徐々に静かになっていく。
基本的に急ぎの出荷品がない場合は、そのベルで一日の作業が終了するのだ。


停止のボタンを押し、機械が止まったのを確認すると、研磨した部品の個数を作業記録に記載して、完成した部品を所定の位置へと置きに行く。

金属の部品のために、数が入った箱は部品によっては二十キロを超える場合もある。


けれど女だからって持てないとか、そんなことは言っていられない。


その作業までが仕事。
このくらい持てなきゃこの仕事は務まらない。


「大丈夫?持とうか?」

よいしょと、声を出しながら部品を持って歩いていると、後ろから声を掛けられた。
その声は、私に失礼な質問をしたあの声。


落ち着いた気持ちがざわざわと蘇ってくる。
私は少し不機嫌そうに話した。


「いいです。これも仕事なんで」

「あそこに置くんだろう?それ相当重いよね?いいよ、持ってあげるよ」


拒否しているにもかかわらず、私の手から強引にその箱を奪い取った。
岡田さんは軽々と持ちながら、すたすたと歩いて所定の場所へと置きに行く。

誰も頼んでないのに余計なことを、と思う。
言いたくもないのに、感謝の言葉を言わなくちゃならないじゃないか。

「……ありがとう、ございます」

「いいえ、どういたしまして」

戻って来た岡田さんに、私は明らかに不満げなトーンで感謝の言葉を言った。
しかし、その言葉を聞いた岡田さんは、満面の笑みを浮かべる。

このむさ苦しい男ばかりの工場の中では滅多にお目にかかれない、とても爽やかな笑顔。
それを見た私は少しドキッとしてしまったが、すぐに気を取り直す。


「じゃあ、まだ掃除が残ってますんで、これで」

「あ、ちょっと待って。ねえ、この後予定ある?」


掃除をしようと後ろを振り向き戻ろうとしたところで、声を掛けられた。

予定?このあと?


「別に。家に帰るだけですけど?」

「じゃあ、一緒にご飯でも食べに行かない?」


は?ご飯!?
今までほとんど話したこともない男とご飯?

「……行きません」


素早く後ろを向きなおして、自分の作業場所へと戻った。

岡田さんはなにか言いたげな顔でこちらを見ていたようだが、気にしないようにして機械のまわりの掃除を始める。

本当になんなの?なんで私となのよ。
あんなにカッコいいんだから、自分の職場の綺麗なお姉ちゃんでも誘って行けばいいじゃない。


もしかして、彼氏がいないからって憐れんで仕方なく誘ってる?
だとしたら、失礼にもほどがあるわ!

悶々としながら掃除を終え、岡田さんがいた場所をチラリと見ると、そこにはもう彼の姿はなかった。

諦めたのだろう、少しホッとした。
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