正しい男の選び方
間違いを犯した夜

「昨日は本当にありがとう」

次の日の夕方、葉子がデリ売り場のチェックをしていると、浩平がやって来た。
昨日一晩のことで、浩平はすっかりワールドフーズの大得意客だ。店長からも慇懃に対応するように、としっかり釘をさされていた。

「ね、お礼したいから、仕事終わったら、ウチに来てよ」

「お礼なんて、ウチの方こそ儲けさせてもらったから、こっちがしなくちゃいけないぐらいよ」

「じゃ、残飯処理に協力して」

「え?」

「早く食べてくれないと捨てることになっちゃうよ、昨日の残り物。
 まだいっぱいあるんだけど。もったいないんじゃないの?」

葉子の痛いところをついてくる。こうなると断りにくい。
やり取りを小耳にはさんだ店長が急いで二人のところにやって来た。

「長澤さん、せっかくだから行っておいでよ。何が残ってたか確認して欲しいし」

「はあ……。じゃ、店長も一緒に行きましょうよ」

「ちょっとムリなんだよねー。こっちの業務の細かいのがいろいろ残ってるから今日はすぐには上がれないと思うんだよね。
 代わりに行って来てくれる?」

「はあ……」

「じゃ、終わったら連絡よろしく」

浩平は言い捨ててどこかへ行ってしまった。
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