春の扉 ~この手を離すとき~

これからのことを考えると、学校に行くのが憂鬱になってくる。

今度から先生に“可哀想に”的な同情の目で見られたりするのかな。
それにもう、2人だけの合図を送り合うこともないんだよね……。


そして、智香や健太郎くんにはどんな顔をして会えばいいんだろう。



まぁ、もうどうでもいいかなー。


もっと悲しかったり寂しかったりするのかと思ったけれど、どこか冷めている自分がいる。


ううん、違う。

感情を受け入れれば苦しくなるのが分かるから、だから心に扉をしているだけ。


それにしてもお薬を飲ませてもらったのなんて何年ぶりだっけ。

おばあちゃんはわたしが熱を出してしまうと、ずっと側にいてくれて、お粥や野菜スープを作ってくれた。
そんなときに“愛されている”と実感できるから、安心できるから、わざと具合を悪いふりをしたこともあった。


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