春の扉 ~この手を離すとき~
「明日からテストだから。もうお風呂に入ってくる」
「何かあったら連絡して。それとお父さんにもお線香と、妙子さんにご挨拶を忘れないこと」
「そんなの分かってるよ」
分かっていないのはこの人なのに。
どうして『一緒に過ごそう』って言ってくれないの?
言って欲しいことを察してくれないの?
わたしは虚しさを振り払うように背を向けると、リビングを出た。
これで今年はもう、この人に会うことはないと思う。