二度目は誠実に
拓人はカバンと一緒に送別会で貰った花束を持ち、沙弓に言われた通り、マンションを出て右に歩いていく。始発が動いてからもう二時間は経過している。

空はどんより曇っていて雨が降りそうな灰色。黒でもない、白でもない曖昧な色。今の自分の気持ちみたいだなと拓人は空を見上げた。


「忘れられないな」


ポツリと呟いて駅へと歩いた。

抱いた感触も甘い声もまだ鮮明に残っている。酔ってはいたものの、そこの記憶だけはしっかりとある。どうやって沙弓の部屋に行ったのか全く覚えていないが。

タクシーで行ったのか、電車で行ったのかは覚えていないが、キスをしたところからは覚えている。キスで酔いが半分ほどさめた。

だから、ちゃんと沙弓であることを認識して、丁寧に抱いたのに……嫌がっているようにも見えなかったのに……断られるなんて納得出来ない。

夢の中という感覚もあったけど……場所が沙弓の部屋だという認識はなかったけど……でも、繋がったのは確かに沙弓だった。


拓人は断られた理由をあとで確かめようと心に決めた。
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